「勝つまでは、まだ私のなかで復活したとは言えないんです」佐伯三貴

CALLAWAY STAFF PLAYER MIKI SAIKI
スタッフプレーヤーインタビュー 佐伯三貴

2016年、右手首のケガを克服してツアーに戻り、見事に賞金シードを獲得。しかし、佐伯三貴が目指しているのは、そんな場所じゃない。優勝して初めて、すべてが報われる。

佐伯三貴インタビュー

 2016年のなかで、いちばんの出来事を尋ねると、佐伯三貴は4月の「フジサンケイレディスクラシック」を挙げた。
「いろんなギャラリーの方や選手に、『お帰りなさい』と言ってもらったので、すごく思い出深い試合ですね。それがいちばん、うれしかったです」
 右手首のケガで戦線離脱したのが、2015年5月の「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」の開幕前日。以降、「トーナメント特別保障制度」を申請し、手術も経ての約11カ月ぶりの復帰戦だっただけに、喜びもひとしおだったことだろう。
 ただ、だからといって彼女が、万全の状態でこの日を迎えたわけではない。2016年、開幕前のインタビューで、「ゴルフをやめてもいいくらいのケガだった」と語っていたくらいだから、それも仕方がない。
「体に対する不安はありました、やっぱり。シーズン中、ずっとですね。練習も限られたなかでやらなければいけなくて、ストレスというわけではないですが、もっとやりたいんだけれど、というのはあります」
 スポーツ選手からプレーする機会を奪うケガは、体だけでなく、心にもダメージを与える。もう2度とつらい思いをしないために、シャフトもボールも、「なるべく手に衝撃が来ないように」と、やわらかいものに変えた。そしてスイングも、本当に「たまたま」の出来事がきっかけとなって、良い方向性が見つかった。

佐伯三貴インタビュー

「昨年1月にハワイへ練習に行ったんですが、そのとき樋口(日本女子プロゴルフ協会相談役)さんもいらしていて、ひょんなことから一緒にラウンドすることになったんです。樋口さんのスイングは、すごく体にやさしいというか、ケガも全然されていない。それで、『どういうスイングをイメージされているんですか』など、いろいろなお話をうかがいました。1回だけでなく、その後も数回、ラウンドや練習をしながらアドバイスをいただいて」
皮肉と言うべきか、幸いと言うべきか、“ケガをしていたからこそ”、樋口相談役の声が、彼女の琴線に触れた。
「私はいままで、父だったり、倉本(昌弘)さんだったり、男性に教えてもらうことが多かったのですが、樋口さんは女性目線でお話ししてくれますし、いまの私に樋口さんの理論がすごくフィットすると思ったんです。それまでやっていたこととは180度違うくらいのスイングですが、ケガ明けの何もない私だからこそ、素直に吸収できたというのはあります。具体的には、私はボールに近づいて、ダウンで右ひじを絞り、ハードなインパクトから強い球を打つということをずっとやっていたのですが、樋口さんはボールから離れて回転で打ちなさいと。いい球も打てていましたし、体への負担も少ないと感じたので、開幕からもいろいろ試しながらですが、アドバイスされた感じで打っていました。いまはシャフトもボールもスイングも、しっくりきています」

佐伯三貴インタビュー

2017年はもう、ケガのことを言うつもりはない

 出場した最初の3試合は、すべて予選落ち。さぞ、復帰の道のりの険しさを実感したのかと思いきや、まったく逆の心境だったと言う。
「想定内でしたね。1戦目も予選は落ちましたが、久しぶりにしては意外と、いい手応えがあったんです。逆に、やれるかも、という感じで」
 そこからは、とんとん拍子だった。4戦目の「ほけんの窓口レディース」で2016年初の予選通過を果たすと、6戦目の「リゾートトラストレディス」では4位タイ。3戦を置いて、「ニッポンハムレディスクラシック」では2位タイ。さらに3戦を挟んでの「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」が、2016年のハイライトと言っていいだろう。最終日を首位タイで迎え、2打差で惜しくも敗れたとはいえ、単独2位。トーナメント特別保障制度では、2016年途中までの出場権しかなかったが、この2位でさらに賞金を積み上げた結果、晴れてシーズン最後までエントリーできるようになった。その期限まで10試合も余しての、“スピード昇進”だった。
「ニッポンハムレディスクラシックは“棚ぼた”の2位みたいな感じでしたけど、3日間いいプレーができましたし、シーズンで初めてゴルフらしいゴルフ、ちょっとシビれる感じのゴルフができました。満足度も高かったですし、今後に向けていい兆しが見えたという感じでしたね。NEC軽井沢72ゴルフトーナメントはすごく調子が良く、最終日最終組でとても楽しかったです。緊張もしましたけど、大学の後輩が朝早くから応援に来てくれて、すごい力になりましたね」
 その後も、「富士通レディース」で6位タイとなり、シーズン全体では4度のトップ10を記録。賞金ランキングは41位で、シード権を与えられる50位は、順位的にも時間的にも余裕を持ってのクリアだった。だが、トップアスリートはとにかく、どん欲だ。何かを達成すれば、もう次の瞬間には、さらに上を見ている。
「ホッとしたという気持ち半分、もっとできたかなという気持ち半分ですね。シードという最低目標をクリアできただけで、満足ではなかったですね」
 どんなエクスキューズがあるとしても、彼女が満足するのは、やはり、2013年以来の勝利を達成した瞬間しかない。そして、もうケガのことを持ち出すのも、これで最後と決めている。
「昨年は、ケガというのを自分のなかで言い訳にしながらやってきた1年だなと思うので、2017年はもうそれを言いたくありません。体のことはいたわりつつですけど、言い訳のないオフを過ごしてシーズンインし、早いうちに勝てたらいいなと思います。私のなかでは、まだ復活していないんです。勝ってから、完全復活という宣言をしたいなと思っています」

佐伯三貴インタビュー
 
佐伯三貴
出身地:広島県
生年月日:1984年9月22日

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